159-衆-法務委員会-7号 平成16年03月30日
○塩崎委員長代理 泉房穂君。
○泉(房)委員 民主党の泉房穂です。
お昼どきではありますが、あと四十分間、有意義な質疑にしたいと思いますので、前向きな御答弁を期待しつつ、質問に入らせていただきます。
もうかなり、これまで主要な論点につきましては論議されてまいりました。私としては、この法案の制度趣旨をさらに各方面から推し進めていただきたいという観点から質問をしたいと思います。
この法案の制度趣旨は、検事さんや裁判官が一般国民の感覚を身につける、また、多様な経験を積んで、それを裁判や検事の現場に生かしていくという趣旨であると思います。全くその点については異論もなく、大賛成であります。
しかしながら、今回の法案によりましても、実際聞くところでしたら、裁判官につきましては、年間、百人のうち二けた、十人程度、検事につきましても七、八十人のうち数人程度という話が漏れ伝わってきます。果たしてその程度で十分なのだろうかというような危惧を持っております。
裁判官や検事におきましては、今お手元の方に資料を配っておりますけれども、これまで、弁護士経験以外にも各種交流事業がなされておりますが、見ていただければおわかりのとおり、裁判官につきましては、民間企業には五名ほど行っておりますが、あとは行政機関や在外公館や海外留学ということでありまして、果たしてこれで一般国民の感覚が身につくのだろうかという危惧を禁じ得ません。二ページ目の検察官につきましても、いろいろ出向はなされておりますが、司法改革推進本部とか法務省とか、そういったところで仕事をしている方が大半でありまして、果たしてこれまでのような交流事業でもって、今回の制度趣旨たる一般国民の感覚を学ぶ、多様な経験を積むということにかなうかという点、非常に心配しております。
私自身も弁護士でありまして、司法試験に九年前に合格し、七年前から弁護士をしております。私が弁護士になって非常に尊敬する弁護士がおりまして、その方は今、裁判官をしております。市役所で、十数年窓口で普通の市役所の職員として働き続けた後に弁護士になろうと思って勉強をして、司法試験に受かりました。裁判官になろうと思いましたがかなわず、まず弁護士になりました。このたび弁護士任官として裁判官になり、今、いい仕事をしていると聞きます。
私が思うには、この制度趣旨からしますと、何も裁判官、検事になってから新たに二年間の経験を積まなくても、既に社会人として多様な経験を積んだ、一般国民の感覚を身につけた方が司法試験を受けて法曹三者になっていく、そういう面でも重なる部分があると思います。そういった見地から質問をしていきたいと思います。
まず前提として、この法案自体が予定している裁判官、検察官が備えるべき、理想とするべき資質についてであります。
この点、私が考えますに、もちろん、法律の専門家でありますから、豊富な法律知識があること、また正確な判断能力、そういったものは当然、大前提であります。しかしながら、それのみならず、裁判官であれば事実認定を行います。検察官であれば起訴をするかどうか、犯罪に当たるかどうか、事実認定、もちろん大事であります。そういったときに、やはり広い社会経験、人間というものはいろいろなことをするものである、なかなか通常考えにくいことも人間はしてしまうものであるといった、そういったいろいろな社会経験があってこそ正確な事実認定ができるものだろうと思います。
また、裁判官であれば量刑、特に執行猶予にするか実刑にするかという場面、検事であれば起訴猶予にするか起訴するかといった場面において、やはり人間の情といったもの、執行猶予にしてもこの人は立ち直ってくれるだろう、そういったことが思えるかどうかという部分につきましては、やはり温かい、先ほど大臣もおっしゃいましたが、ハート、心といったものが極めて重要だと思います。
また、今回導入が予定されております裁判員制度、これにつきましても、裁判官が一般の市民の方にわかりやすく説明をする能力も必要となります。検察官につきましても、被害者の支援の場面において、心傷ついた被害者に対して、やはり近くに寄り添って、一緒になってその気持ちに寄り添えるような感覚、それも大事です。
そういったことを含めますと、単なる法律知識、判断能力のみならず、プラスアルファの資質が要るのではないかと私は考えますが、この点、理想とするべき裁判官像、検察官像につきまして、非常に大きな問題ではありますが、それぞれ、法務大臣、最高裁の方から、まずはお答え、よろしくお願いいたします。
○野沢国務大臣 さきの本会議におきましても、委員から大変活発な御質問をちょうだいしましたこと、改めて御礼を申し上げます。
お尋ねの裁判官あるいは弁護士さん含め、法曹関係者の皆さんに期待している姿といいますか人間像、こういうことになりますと、これはもう一口にはなかなか言えないんですが、私は、人間力豊かな人になっていただきたい。冷静な判断を下せる頭脳、そして今もお話がありました温かいハート、そしてまたそれを裏づける多様な社会経験を積んでいただきまして、より適正な、だれが見てもなるほどという判決なり判断が出るような、そういう裁判官であり、あるいは検察の方であり、弁護士さんであっていただきたいな、こう思うわけでございます。
今回の法律は、それにまず一歩近づくための大事な法律ということで、どうぞよろしくの御審議をお願いしたいと思います。
○山崎最高裁判所長官代理者 裁判官は、公正中立な立場で法律を解釈いたしまして、具体的な事実にそれを適用し、紛争を適正妥当に解決する職責を有するものでございます。したがって、それにふさわしい資質、能力が必要だと期待されるところでございます。
理想とされる裁判官像あるいは裁判官のあり方ということは、さまざまな角度で議論されましょうし、切り口がございますので、なかなか一言で申し上げるのは難しいところがございますが、一つ、これからの裁判がどのようなものになっていくのか、そういったこととの関係で考えてみるということができようかと思うわけであります。
そういう点でいいますと、まず、裁判の対象となる事象、これはますます複雑化してくるだろうと思います。そういうことに伴って、やはり裁判官には高度の専門的知識、これは、委員御指摘になられました、単なる法技術というようなものではなくて対象となる社会事象に対する理解、こういうものができるような専門的知識、こういうものが必要だろうと思います。
それからもう一つは裁判の説得性、これがこれまで以上に問われることになってくるだろうと思っております。つまり、国民の理解、信頼を得るということが非常に重要になるわけでございまして、その面でいきますと、やはり豊かな人間性を備えていることとか、あるいはバランスのとれた判断力を持っているとか、そういったことが非常に重要になってくるだろうというぐあいに思っております。
こういった二つ申し上げました双方を身につけるというのはなかなか大変なことだとは思いますが、これからの裁判官という職には必要なことだろうというぐあいに思っております。
○泉(房)委員 私も、先ほど申し上げましたが、今回の法案につきましては、趣旨については本当に賛同するものであります。ただ、それを補う意味で、法曹になる前の社会経験、社会人経験を経た方が法科大学院に入ったり、また、今はまだ並行してありますが、司法試験に合格して裁判官、検察になっていくという道も、やはりこの制度趣旨からすれば何らかの配慮があってしかるべきだと思いますが、この点、法務大臣より、そういった採用後の社会経験のみならず、いわゆる裁判官、検察官になる前の社会経験につきましても一定の配慮といいますか、重要性についての認識をお伺いしたいと思います。
○山崎政府参考人 この点につきましては、法科大学院の制度をちょっと御説明させていただきたいと思いますけれども、これからの法曹には、やはり社会人としての経験を積んだ者等、こういう多様なバックグラウンドから法律家に登用していくということがどうしても必要になってくるだろうという認識でございまして、実は、法科大学院の設置に関しましても、そこを重点的に、かなり意識して考えたわけでございます。
これは、法科大学院の設置基準に関します文部科学省の告示では、入学選抜において、法律以外の専攻分野を修めた者や実務経験を有する者などが三割以上となるよう努めることというふうにされているわけでございまして、この四月から開校、もう間もなくでございますけれども、各法科大学院においてもこれにのっとって入学選抜を行っているものと承知しております。
○泉(房)委員 私自身も、弁護士になろうと思ったのは二十六、七歳のころであります。私ごとですが、私自身は、今は亡き石井紘基先生のもとでいろいろお手伝いさせていただく中、石井紘基先生から、弁護士になったらどうかとお勧めをいただき、受験を決意しました。その際、やはり迷ったのは、その後の生活がやっていけるだろうか、司法試験に受かるだろうかというふうな気持ちであります。
そういった立場から考えますと、今回の法科大学院、大学を卒業して間もない方にとっては、確かにその後の大学院という形で延長に位置づけられますが、社会人として、例えば家族を抱えている方にとりましては、他学部であれば、私も教育学部出身ですが、三年間、またその後、研修、短縮されて一年としても、四年間の間、家族をどうやって養っていくのか、また合格するだろうかという不安ももちろんあります。
そういったことに対する配慮につきましては、今御説明もありましたが、現実のところ、今なされている配慮は、社会人と、あと他学部を入れて三割というような指針であります。しかし、他学部といいましても、経済学部やほかの学部からそのまま大学を卒業してすぐに行かれる方もおります。社会経験があるとはもちろん限りません。むしろ、社会経験を重視するのであれば、純粋に社会人枠というものの比率をきっちりと、文部科学省として、各大学に告示という形で今回同様なすべきではないかと考えます。この点についてのお答えをいただきたいと思います。
また、現状、今回の定員は、確認いたしましたところ、法科大学院、六十八大学、五千五百九十人でありますが、このうち社会人枠を設けているのは、六十八大学中二十五大学で、半分に至りません。また、人数におきましても、三百五十人、六%程度であります。社会人経験を経た方が法科大学院に入る門戸としてはやはり狭まっているような感がぬぐい切れません。この点、文部科学省としてどのような配慮をしていくのか、あわせてお答えください。
○遠藤政府参考人 多様なバックグラウンドを有する人材を多数法曹に受け入れる、こういう司法制度改革の趣旨を踏まえまして、先ほど法務省の方から御説明ございましたように、三割以上の入学に努力すべし、こういう告示を設けてございます。
これを受けまして、今御指摘のように、大学によりましては他学部出身者の優先枠を設けたり、あるいは特別選抜ということで、これが六十八大学中二十五大学ございます。そのほか、募集要項で三割以上を目安として選抜を行う、こう明記しておるのが八大学。そのほかでございますけれども、社会人を含めまして、法律学部についての基礎的な知識を習得していない法学未修者を対象とするコースを設けまして、法律科目試験を課さずに、適性試験の結果のほか面接や小論文等により入学選抜を行う、そういうコースを設けている。これは、告示の趣旨が、三割以上という趣旨でございますけれども、特別枠を設けるということを必ずしも求めておりませんで、いろいろな工夫で三割以上入学するように努力すべし、こういう規定でございます。
したがいまして、私ども、入学者が確定しましたらどういう実態であるかということをきちんと調査して、もし趣旨に沿っていないようなことであれば、また対応を考えていきたい、こうも思っておるわけでございます。
ちなみに、一、二に問い合わせたところ、東大でいいますと、合格者が三百二十五人おりまして、そのうち社会人が百五十四人、四七・四%。一橋大学についても、社会人が三一%。そのほか、他学部の人はまた別にいる、こういうような実態であるというふうに聞いておるわけでございます。
〔塩崎委員長代理退席、委員長着席〕
○泉(房)委員 きょうのきょうですぐに答えは出ないでしょうけれども、今の三割ですけれども、指摘しておきますが、他学部といいましても、今の現場を見ますと、他学部が早い段階から司法試験予備校に通って、卒業と同時に受験するというようなことが一般的なわけであります。社会経験があるわけではありません。社会人と一律にいいましても、実際のところ、卒業後も司法試験を受け続けている方、家庭教師や塾講師で食いつなぎながら司法試験を受けている実態があります。
そういった方まで社会人に含めてしまいますと、この制度趣旨であります多様な経験ということからしますと、やはりそぐわない面があると思いますので、今後調査なさると思いますので、本当にこの制度趣旨に合った、多様な社会経験を持った方がちゃんと法科大学院においても入学できるようなシステムづくりに心がけていただきたいというふうに指摘だけさせていただいて、次に、お金の問題についても確認しておきます。
法科大学院は高いです。一般的な大学院が五十二万八百円に対し、法科大学院は高くて、八十万四千円要ります。入学金も二十八万二千円。こんなお金はなかなか用意できません。確かに奨学金制度が予定されてはおります。ただ、それも返さなきゃいけません。例えば、家族のある方が奨学金を借りた場合、確かに今、上限二十万までふえました。でも、結局、三年間の法科大学院の期間二十万借りますと、七百二十万程度の借金を抱えることになってしまいます。無利子とも限りません。有利子もあります。
やはり、そういったことも含めますと、授業料免除など多方面からの経済的支援というものも考えるべきだと考えますが、その点、御見解を問います。
○遠藤政府参考人 御指摘のように、大変学資が高いということもございまして、平成十六年度予算案におきましては、今御指摘ございましたように、法科大学院生に対する奨学金といたしまして、無利子で千三百人分、有利子で二千二百人分、合計で三千五百人分の貸与人員を確保しておるところでございます。これは、貸与率にしまして、入学予定人員の六割ということになるわけでございます。
それから、金額でございますけれども、有利子奨学金について上限の月額を、これまでの十三万円から二十万円に引き上げるというような措置も講じておるわけでございます。
授業料の減免制度でございますけれども、国立大学におきましては、従来より、経済的な理由などにより授業料等の納付が困難である者などを対象に、修学継続を容易にし、教育を受ける機会を確保する、こういう趣旨で授業料減免を行っておりますが、国立大学法人化後におきましても、国立大学の法科大学院を含めて、今大体五、六%という水準でございますけれども、それと同規模の免除が可能となるよう十六年度予算案におきましても必要額を措置しておりますし、また、公私立大学におきましてそういう授業料減免措置が実施された場合には、特に私立大学につきましては、経常費補助金の中で実施状況に応じた傾斜配分による補助金の増額措置というのも実施してございますし、私立大学の授業料が高くならないようにということで、法科大学院に対する特別の経常費助成も予算の中に組み込ませていただいたところでございます。
○泉(房)委員 それから、実際に法科大学院を卒業して司法試験に受かった後の修習時代の問題であります。
この点、私の修習時代は給料が出ておりまして、今も出ておりますけれども、今議論のあるところですが、ただ、修習生になりますとアルバイトができません。ですので、その給料のみで家族を養うということになるわけですけれども、ここは議論のあるところではあろうと思いますが、その修習期間中のそういった経済的支援策につきまして、今議論のあるところでしょうが、どのような方向で考えられるのか、お答えください。
○山崎政府参考人 ただいま御指摘のように、修習生は修習に専念する義務があるということから、兼職とかバイトとか、これはできないということになっております。それが前提でございます。
修習生に対する給費の問題でございます。
これは、私どもの方に検討会がございまして、まだその検討を継続中ということでございますが、現在の状況でございますけれども、今後における司法修習生の増加に実効的に対応して法曹人口の増加を実現するために、修習生の給費制の見直しについて検討を加えているということになるわけでございますけれども、給費制を見直す場合には、修習の実を十分に上げることができるようにするため、その代替措置として貸与制を設けるなど、そういうような検討を現在しているということでございます。
これについてはさまざまな御意見がございまして、最終的な結論を出すのはもう少し時間がかかると思いますので、そこまでお待ちをいただきたいというふうに思います。
○泉(房)委員 これからの検討だと思いますが、俗っぽい言い方ですが、裁判官や検事になる方が金持ちの子弟ばかりではなく、貧乏人の小せがれやお嬢さんもちゃんとそういったところに入っていってこそ多様な国民の意見が反映されると思いますので、そういった配慮の方をぜひともよろしくお願いしたいと思います。
続きまして、司法試験に受かった後、実際に裁判官や検事に採用される時点の問題であります。
現実に社会経験のある方は一定数おられます。そういった方が今裁判官や検事になっているかというと、現実的には極めて限られているというふうに私は認識しております。
お手元に配りました資料の三枚目、四枚目ですが、これは、ここ数年間の司法修習時点におけるそれぞれの修習時の年齢と、裁判官、検察官になった方の年齢の対比表であります。
簡単に申し上げますと、最近では、大体修習が終わるのが、去年の場合ですと二十九・三歳、おととしが二十八・六歳、まあ二十九歳前後で大体修習を終わるわけであります。
しかるに、裁判官になる方については二十六歳ぐらいであります。三歳程度平均年齢が若いという実態があります。検察官につきましては、四枚目ですが、当然、一般的な平均年齢は一緒ですから、検事につきましては二十七・一歳、その前が二十六・六歳、同じく二十六、七歳。二、三歳やはり若いということです。平均において三歳も若いというのは、極めて若いわけであります。
具体的に申しますと、大学を現役で通って、司法試験も大学卒業後すぐ通る、または、一年ぐらいだけ大学で浪人したか司法試験で一浪したかという方が最も多く裁判官や検事になっているという実態をすごく感じます。
そういった方々が多様な社会経験を持っていることは非常に珍しいわけでありまして、確かに、キャリアシステムの問題もありますし、それだけ優秀な方だから裁判官、検事になるという面もあるのかもしれませんけれども、やはり多様な社会経験を踏まえた方が裁判官、検事になることが望ましいという価値判断からしますと、そういった方のみに限らず、社会経験のある方も裁判官、検事になっていくような配慮があってしかるべきだと私は考えますが、この点につき、お尋ねいたします。
○山崎最高裁判所長官代理者 私の方から、裁判官についてお答え申し上げたいと思います。
裁判官の採用に当たりましては、任官希望者の能力、識見、人物等を総合的に考慮した上で裁判官としてふさわしい者を採用する、こういう方針でございまして、採用前に他の職務の経験があるかどうか、こういったことも、こうした総合的考慮の一つの要素として考えておるところでございます。
裁判所は、採用前に他の職務の経験を有する者を含めまして、多様なバックグラウンドを有するすぐれた人物、これを多く採用したいというぐあいに考えておるところでございますが、現実を申し上げますと、他の職務を経験した人たちが任官を希望されるというそのこと自体が非常に少ないものでございますので、結果的には、なかなか採用者の中でそういう経験を有している方が多くならない、そういう状況だろうと思っております。
年齢のこともおっしゃられましたけれども、これもちょっと似たようなところがございまして、年齢が高いからといって採用しないというような、そんなことではもちろんないわけでございますが、修習生である程度年齢の高い方でありますと、もう既婚者で家族を持っておられるとかいうことがありますと、裁判官になった場合に、さあ転勤どうしようかというようなことをやはりお考えになるようでございまして、なかなか希望される方はそう多くない、そういうことがあろうかと思います。
その結果として、先ほどお示しいただきました資料のように、判事補の採用時の年齢が低くなっている、こういう状況であろうと考えております。
○大林政府参考人 検事任官者の平均年齢が司法修習終了者の平均年齢を下回っているという点は、委員御指摘のとおりでございます。しかしながら、昨年の検事任官者七十五名の任官時の年齢は二十三歳から三十八歳までと幅がありまして、平均年齢二十九歳以上の者も二十一名おります。
したがいまして、必ずしも年齢にはかかわらず、有能で適性のある者を採用しているというふうに承知しております。
○泉(房)委員 私自身も修習時代を経験していますので、お答え自体、こういう場でなかなか言えることと言えないことがあるんでしょうけれども、私として皆さんに知っておいていただきたいのは、現実問題、裁判官、検察官になるには、司法修習時代、各クラスというのがありまして、そこのクラスの担任の先生がいまして、高校みたいなものですけれども、その先生が実質的には、君、裁判官にならないか、検事にならないか、裁判官になりたいんですという相談に対して、君、ちょっとやめておいたらという中で、実際上、絞り込みがなされているのがまさに実態であります。一般的な修習生の間の一般認識としては、三十も超えたらもう裁判官は無理だとかいうようなのが、一般的にそういうふうに修習生の間では言われているという実態があります。
また、裁判官につきましても、できる限り、ある意味では素直なという方なんでしょうが、私自身、修習時代は、私自身は変わり者ですので、修習へ入りましたけれども、余り勉強もせぬと、近くの障害者施設のボランティア活動をやったり、また手話サークルを自分で立ち上げたりしておりました。そういったときに、裁判官志望の方が手話サークルに来られますと、担当教官から、君、手話サークルなんかに行っていたら裁判官になれないよと言われたというふうにして、ある方が相談に来られます。私はびっくりしまして、何で手話サークルの、手話をしたら裁判官になれないんだとその人に聞きましたら、教官からは、いや、とにかく修習生時代はおとなしくまじめに勉強しておったらいいんだというようなことを言うような始末です。
別に個々の真偽のことを今私は確認したいわけではなくて、確かに修習生について、若くて優秀な方をという面をある程度重視されることは私も否定はしませんが、しかし、繰り返し、それのみならず、今回の制度趣旨のように、単に法的知識、判断能力、要するに、よく勉強して賢かったらいいだけじゃなくて、人の痛みがわかるような面の方もやはり裁判官、検事に要るだろうという制度趣旨からしますと、例えば、そういう個別の採用に実質的に当たっている担当教官も、一定割合、何人かのうち二割や一割ぐらいは、そういった社会人経験のある方を配慮してなってもらうと。そういった方が、例えば家庭裁判所で、離婚や相続やそういった一番生々しい人間模様のところで本当によき裁判、審判をすることが期待できる面もあろうと思います。
そういったことにつきまして、今余りにもそういったことに対する配慮がないのではないかというふうに危惧をしておりますので、お答えできる言葉も限られているのかもしれませんけれども、その点、社会人の経験のある方についても、裁判官、検事の採用についてやはりそのことについて一定の配慮をする旨の前向きの答弁を期待して質問させていただきますので、御答弁よろしくお願いいたします。
○山崎最高裁判所長官代理者 裁判官の採用につきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、私どもは、むしろ多様なバックグラウンドを持った人たちがたくさん任官してくれればいいというぐあいに考えております。
今委員のお話の中に出ました司法修習生の修習の指導に当たる教官たちの認識という点で申しますと、実は、言ってみれば、ストレートで来た非常に若い修習生が、それがゆえにいいということではない、必ずしも優秀とも言えないと。
いろいろな意味でそれは言っているんだろうと思いますが、単に法律的な知識があるとかそういうことではなくて、やはり裁判官に必要な当事者に対する共感ですとかそういうバランス、人間性、そういったものすべてを含めた上での言葉だろうと思っておりますけれども、そういう意味では、むしろ、委員のおっしゃられるように、既に別の職務を経験した者で司法試験を通って法曹を志す者の中にかなりすぐれた人物がいるということを言っております。
そういうことが教官の共通認識になっておりまして、そういうところで、我々は優秀な人物になっていただきたいと思うんですが、これが、先ほど申し上げたところで、実は、こちらからラブコールを送ってもなかなかこたえていただけないような状況も一方ではあるというようなことがございますので、そういう状況を踏まえながらも、先ほど申し上げましたとおり、できるだけ多様な人物を裁判官に採用していきたいというぐあいに思っております。
○大林政府参考人 検事の採用につきましては、任官志望者が有する多様な職業経験についても、検事としての適性を判断する要素の一つとしてはこれまでも考慮しておりまして、今後とも有能で適性のある人材を検事として積極的に確保するため努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
○泉(房)委員 また今後とも採用が毎年続くわけですので、また来年も同じように、極端に三歳も若いということにつきましては、その合理的理由があるならともかく、私としては、とにかく早く受かった賢い方がいいということに偏っているように感じますので、年齢構成につきましてもよく配慮されて、来年度もまた平均値をいただきますので。別に、年齢が若いからいけないと単純に言っているんじゃないんです。ただ、極端に三歳も若いというのはやはり余りにも異常だと私は思いますので、その点厳しく指摘して、次の質問に入らせていただきます。
次につきましては、資料の一枚目、二枚目にも、配らせていただいていますが、既になされている事業との関係であります。
今回の制度が、これまでの制度と並ぶような制度だという位置づけだというふうに伺っておりますが、ただ、私からしますと、かなり違うのではないかと。特に裁判官につきましては、例えば民間企業は五名程度、あとは本当に行政機関や在外公館、検事はほとんどが役所なわけでありまして、それと在野の弁護士というものはやはりおのずから違うだろうと思います。
私が質問したいのは、これまで聞いているところでは、裁判官につきましては、百人中五十人がもう既にこういう形で行っていると。残り五十人のうち十名程度を目安として弁護士経験をしてもらおうということであります。将来的には、裁判所といたしましては、ほぼ全員に経験を積ませようということでありますが、とすれば、残り五十名は弁護士経験を積む方向で検討していただきたい。
また、それ以上に、こういった行政機関や在外公館や海外留学ももちろん否定はしませんが、それがあるからといって、ではもう多様な経験を積んだのか、一般国民の感覚に触れたのかというと、そうとも限らないと思いますので、こういった方につきましても、あわせて、弁護士経験を含めての多様な経験を積めるような配慮をすべきだと考えます。
同様に、検察官につきましても、ほとんど行っているのは法務省や司法改革推進本部などでありまして、これで一般国民の感覚がわかる場所なのかといいますと、そうとも限らないと私は考えますので、この点。
また、検察につきましては、人数がまだ出てきません。何人出す予定かにつきましても、裁判官は、百人のうち一割程度の、まあ二けたという数字を言っておるようでありますが、検察につきましては、今七、八十名毎年おるわけですから、少なくとも一割の七、八人程度はまず初年度から目安にすべきだと考えますが、この点あわせて、それぞれお答えください。
○山崎最高裁判所長官代理者 今委員の方からお話がございました、一期百人のうちで半数程度、五十名まではちょっといかないだろうと思いますが、重複して経験している者がおるものですから実際の数としてはもう少し減るだろうと思っておりますが、いずれにしてもその程度でございまして、私どもは全員に何らかの外部の経験をさせたいということを考えているものですから、今回の弁護士職務経験制度にのっとって、できるだけ多数の判事補を経験させたいということを考えております。
先ほど、二けたに乗る程度のということを申し上げましたが、あくまでもスタートの時点ということでございますので、これが円滑に運用されていけば、その人数は当然膨らんでいくだろうと思います。
ただ、今あるプログラム、この方の充実ということも同時に図っていきたいと思うものでございますから、最終的にどういう数になるか、これはちょっと不確定な要素がございますものですから、現在確定的なことは申し上げにくいということでございますが、いずれにしましても、できるだけ多数経験できるように努力してまいりたいと思います。
○樋渡政府参考人 これまでに実施してきております他職経験につきましては、委員御指摘の、また委員がお配りになられました資料の中に入っておりますが、その中の最後の方にも書いてございますが、さらに平成十四年四月からは、検事に市民感覚を学ばせるため、公益的活動を行う民間団体や民間企業に検事を一定期間派遣する外部派遣制度も導入しておりまして、現在のところ、勤務経験十五年程度の間に、在職者の約七割から八割程度がこれらの他職経験、この表にありますことすべて含めましての他職経験に従事している実情にございます。
このような他職経験の活用につきましては、例えば、海外の検察運営の実情等を研究した上、その成果をその後の検事としての職務に生かしており、また、被害者支援センターに派遣された検察官は、改めて被害者対策の必要性を実感し、検事の職務に復帰した後、被害者の立場に一層配慮した捜査を実践していますほか、研修内容等を他の職員に伝えて好影響を与えるなどしているところでございます。
それで、お尋ねの、今回の法案ができましてからの弁護士の実務につくことでございますが、今後は、この弁護士職務経験の状況等を踏まえながら、これらのさまざまな、制度の円滑な実施をするための工夫をすることが、課せられた重要な課題であるというふうに思っております。
そして、どの程度の人数を弁護士経験させるのかということでございますが、これは、受け入れていただく弁護士事務所の方の御都合もございますでしょうし、日弁連と協議をしながら進めていきたいと考えておりますが、少なくとも数名ないし十名程度は行かせてやりたいなというふうに考えているところでございます。
○泉(房)委員 残り時間も少なくなってまいりましたが、次は受け入れの問題であります。
弁護士の受け入れ事務所につきましては日弁連の方で態勢を整えると思いますので、日弁連の努力に期待するとして、そこで、受け入れ態勢が整った場合であります。実際のところ、今伝え聞くところでは、大阪や東京の大きな、大都会の事務所が予定されている旨も伝わってきますが、私としては、何のために弁護士経験をするのかと。それはほんまに、一般の国民のいろいろな、雑多な方のいろいろな思いや痛みやそういったことを学ぶためにではなかろうかと。そのときに、いわゆる、その弁護士事務所に行っても、やたら大きな事務所で、かつ、している仕事も非常に、大企業のことのみをやっているような事務所に行って、果たして生身の心の痛みやそんなところに触れられるのだろうかという危惧を抱きます。
もちろん両面要るんでしょうけれども、少なくとも、日弁連の方で多様な事務所が用意された場合、例えば、私などは田舎の弁護士でありまして、たった一人で弁護士をやっていて、土日もいろいろな人が訪ねてきてピンポン鳴らされて相談させられるというか、そういう立場です。そういう中でこそ感じる部分があるわけでありまして、そういった地方の事務所、また弁護士の数が一人二人の事務所であったとしても、そういった受け入れ態勢が整ったのであれば、派遣する方もきっちりとそういったことも配慮して偏りのないような派遣をしていくというような心構えがあるのかどうか、お聞きしたいと思います。
○山崎最高裁判所長官代理者 判事補の関係で申し上げますと、この弁護士職務経験制度、これは、判事補が主体的、積極的に取り組まなければ意義がないといいますか、効果が上がらないところでございますので、基本的には、判事補の希望を入れて、その希望に沿ったような形で運用したいというぐあいに考えております。本法案におきましても、判事補の同意に基づいて行うということが決められておりますので、当然そういうことだろうと思っております。
判事補の希望はどうかということを見ますと、これは実はさまざまでございまして、一つは、非常に専門的な法律事務所で専門的な分野について経験を積みたいという希望を述べる者もおりますし、一方は、その逆でございまして、一般的な、市民的な法律紛争にかかわりたい、こういう希望も申し述べておりますので、そういったさまざまな希望を受けとめていただけるだけのバラエティーに富んだ受け入れ事務所を用意していただけますと、そういった形で、判事補の希望に応じたところでこの経験制度を動かしていけば、バラエティーに富んだ形の経験ができ上がっていくんだろうというぐあいに思っておるところでございます。
○樋渡政府参考人 検事をどの事務所で受け入れていただくかにつきましては、受け入れ先事務所がどの程度、どの地域にあるのか、また対象となる検事がどのような希望を持つか等によって決まってくるものと考えております。
もっとも、本制度を円滑に運営するためには、日弁連に積極的に関与していただくことが不可欠でございまして、受け入れ先となる弁護士事務所の募集等を含め、今後、日弁連との間で協議をしていきたいと考えておるところでございます。
○泉(房)委員 いろいろ聞きたいことはありますが、もう時間が迫っているようですので、最後に一点だけ。
これまでも質問がありましたけれども、今回議論のありました、公務員の身分が残ったがゆえに報告義務、報告をするということ、それから懲戒権が二重に及ぶという問題があります。
既に質問がなされておりますけれども、再度確認したいのは、弁護士という職業柄、やはり独立性の確保という問題が重要であります。特に日本の弁護士の場合、弁護士自治というものが確立しておりまして、この点が弁護士の人権擁護、そういった面において極めて重要な意味を有していると考えます。
この点、今回の法案でも当然だと思いますが、こういった弁護士の職務の独立性、弁護士自治に配慮した運用、報告の問題、また懲戒の問題につきましてもそういった配慮がなされると思いますが、その点、最後、大臣の方から、そこの配慮につきまして御答弁をお願いいたします。
○野沢国務大臣 身分が二つにありましても、やはり私は、この中で一番大事なのは今行全力ということでありまして、今ここで拝命しておりますお仕事について、やはり職務に忠実にやっていただく、これを原則にしながら、運用について適切な方法を考えていきたいと思います。
○泉(房)委員 適切な運用を期待しつつ、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○柳本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
次回は、明三十一日水曜日午前十時五十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時四十分散会
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