○柳本委員長 泉房穂君。
○泉(房)委員 民主党の泉房穂です。
 私は、成年後見制度について取り上げていきたいと思います。
 高齢者、障害者が地域で暮らしていくためには、この成年後見制度の充実化が不可欠である、その認識のもとに私はこれまで弁護士としてやってきましたが、国会議員として、引き続き、成年後見制度が質量ともに充実化するまでこの問題を取り上げ続けていきたい、その思いでこの質問に入らせていただきたいと思います。
 まず、どんな制度であれ、その制度が一体どれくらいの利用者を予定しているのか、にもかかわらず今どれくらいの利用者なのか、そこからスタートするべきであります。そこで、まず、この成年後見制度が予定している利用者、潜在的な利用者の数はどれくらいなのか、まずその点から質問いたします。お答えください。
○小島政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘の数でございますが、厚生労働省の統計によりますと、まず、知的障害者の方の数につきましては、平成十二年の推計で約四十六万人。それから、精神障害者の方の数につきましては、平成十四年の患者調査の推計で約二百五十九万人。それから、痴呆性高齢者の方の数につきましては、これも平成十四年の推計で約百四十九万人となっているところでございます。
 しかしながら、こうした方々の中には、判断能力を有する方や、家族の援助が受けられる方もいらっしゃると思いますので、権利擁護なり、あるいは成年後見が必要だという方はもっと少なくなるというふうに考えております。
○泉(房)委員 もっと少なくなるというのは、どれぐらいをお考えでしょうか。お答えください。
○小島政府参考人 今のところ、私どもとしては、権利擁護が実際に必要な方が何人かということについては把握をいたしておりません。
○泉(房)委員 把握もせぬと、そんな仕事ができるんですか。お答えください。
○柳本委員長 泉君、委員長に発言を求めて御質問ください。
 泉房穂君。
○泉(房)委員 ごめんなさい。失礼しました。
 厚生労働省が所管しておるわけですから、一体この制度が何人の人を予定しているか、介護保険であれば介護保険のサービスを利用する人たちの数、支援費制度だって、やはりそれを予定している数があってこそ、その制度の設計、予算組みができるわけであります。その実態把握に努めるお気持ちがおありでしょうか。お答えください。
○小島政府参考人 私ども厚生労働省といたしましては、平成十一年十月から、地域福祉権利擁護事業というのを発足させまして、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理、あるいはまた成年後見制度の利用支援というふうな制度を立ち上げてまいりました。十二年度から本格的に発足をいたしまして、昨年の十二月に一万人の方が今利用をされております。
 まだまだこれは非常に問題の点が多くありまして、私ども充実に努めているところでございまして、しかるべき時期には、先生のおっしゃるような全体の数の予想なりもしなきゃいかぬと思いますが、今のところは制度の充実に努めているということでございます。
○泉(房)委員 実態把握に努めて、お答えください。
 では、実際、現在どれぐらいの方が利用しているかの問題でありますが、その前に、諸外国の利用者の率を調べますと、諸外国、ドイツなどですが、ドイツでは八千百万人の人口に対して実際の利用者は百万人を超えております。ほかの国を見ましても、約一%の人が同様の成年後見制度を利用しております。
 日本の場合は、高齢社会で比率が高いわけですから、一%を掛けても百二十万、恐らく百二十万人以上の方がこの制度を利用してしかるべきだと私は考えます。
 では、実際に何人の方が今利用しているか、お答えください。
○山崎最高裁判所長官代理者 成年後見制度が実施された以後の、平成十二年四月から平成十五年十二月までの家庭裁判所に申し立てられた後見等開始事件の合計は、四万八千五十二件となっております。
○泉(房)委員 四万八千というのは、これまでの裁判所の審判を足した数だと思いますので、死んだ方もいますので、実際上、現在利用している方はもっと少ないということだと思います。
 それはさておき、今ここでわかったことは、潜在的な利用者は合計しますと四百五十万人ほどいるであろう、実際、諸外国と比べると百二十万人以上の利用が見込まれてしかるべきであろう。しかるに、単純に足しただけでも、亡くなった方を入れずに足したとしても、いまだ四万人程度なわけであります。百万人台とわずか四万人、全く利用が進んでおりません。
 ところが、この法律ができた二〇〇〇年四月、介護保険の導入と一緒にできた、車の両輪と言われてできた制度ですが、このときに附帯決議があります。
 附帯決議の一、読みますが、「政府は、新しい成年後見制度の実施に当たっては、自己決定の尊重、ノーマライゼーション等の改正の理念が制度の運用に十分反映されるよう、新制度の趣旨・内容について、福祉関係者、司法関係者等の関係者に十分周知徹底されるよう努めること。」周知徹底するように附帯決議は求めております。
 また、この運用の面で非常に大きな問題とされております登記所の問題でありますが、この点につきましても、今は東京法務局一カ所であります。附帯決議はこのように言っております。「政府は、後見登記等の利用者の利便の向上に資するため、登記の申請数等を勘案しつつ、利用者にとって利用しやすい登記所の体制の整備に努めること。」このように、周知徹底を図ることを、登記所も拡充を図ることを附帯決議は求めております。
 しかるに、今申し上げたように、利用がほとんど進んでいない、登記所もいまだに東京法務局一カ所で使いづらい。この問題につきまして、どういう改善を図るおつもりであるのか。大臣、お答えください。
○実川副大臣 今、委員御指摘になられましたように、平成十二年四月からこの制度が出発しております。法務省といたしましても、制度導入の前後を通じまして、制度の周知、また定着を図るために、法務局、また司法書士会等へのパンフレット、またホームページ等にQアンドAを掲載するなどいたしてまいっております。今後とも、関係機関と連携しつつ、引き続きパンフレットを配布するなどいたしまして、成年後見制度一般についての知識の普及に努めていきたいと思っております。
 また、御指摘のありました登記につきましてでありますけれども、これは現在、東京の法務局に、一カ所のみ取り扱っております。これを、利用者の方々の利便性を考慮すべく、なるべく早い時期に全国の法務局、また地方法務局におきましても登記事項に関する証明書の交付ができるようにするために、今準備を進めているところでございます。
○泉(房)委員 法務局の数ですが、現在六百九十九あると思います。しかるに今一カ所。今のお話だと、拡充を図るという方向のようですが、いつまでに何カ所、その方向をお示しください。
○房村政府参考人 ただいま副大臣からも御答弁申し上げましたように、登記そのものは東京法務局一カ所で扱っておりますが、登記についての証明書の交付、これは非常に件数も多うございますので、平成十六年度中に、全国にございます五十カ所の地方法務局においてこの証明書の交付事務が取り扱えるようにということで、現在準備を進めております。
○泉(房)委員 今のお答えだと、十六年度中に五十カ所ということでありますが、全部で六百九十九カ所あります。あとはどうなさるおつもりでしょうか、お答えください。
○房村政府参考人 当面、ただいま申し上げましたように、五十カ所についてということでございますが、その後のことにつきましては、この登記制度の利用状況、特に証明書の交付状況、こういったものを勘案しながら検討を進めてまいりたい、こう思っております。
○泉(房)委員 普通の人が利用しようと思って東京法務局に取り寄せるのは大変です。五十カ所に広がっても、地方にお住みの方はやはり郵便手続などして大変なわけです。それを地元の、近くの法務局で手続ができる、そうすることによって利用も促進されるという関係にあるわけですので、利用がふえたからふやすのではなくて、ふやすことによって利用をふやしていく、そういう発想をぜひともお願いいたしたいと思います。
 また、私が声を荒げてしまうのは、実際上、弁護士として、数多くの痴呆の高齢者が多くの消費者被害に遭っていることを知っているからであります。呉服を売りつけられたり浄水器を売りつけられたり、要するに、何度も何度も繰り返し高齢の方が被害に遭う。それを救おうと思ってもなかなか救い切れない。クーリングオフ期間は過ぎてしまっている。そういう中で、身内の方が心配して、地域でひとり暮らしは無理だ、そういうことで施設への入所を決断する。そういった悲しい現実を日々味わっているからであります。
 また、親の財産をねらって、本当は地域で暮らしたいと思っているにもかかわらず、その家族が本人の意思に逆らって同じように施設に入れてしまう。そういった中で、施設に入っておられる方から、どうして私が施設に入れられてしまうんでしょう、そういった声を何度も聞いているからであります。
 そういった事態を避けるために、まさにこの成年後見制度はあるわけでありまして、まだ四万という利用、これを百万台に上げるには、こういったパンフレットを、今の啓発活動で実際やっておるのは、このパンフレットを法務局に置いているぐらいなものです。
 本当に必要な方というのは、法務局に行く方ではありません。知的障害者、精神障害者、痴呆性高齢者の方、そしてその家族のもとに届けるためには、在宅介護支援センター、そういった各障害者の施設にきっちりと情報が伝わるようなことをしていかなきゃいけない、そのように思いますので、その点につききっちりとやっていただきたい、そのように強く申し入れます。
 次に、最高裁の運用に関してであります。
 実際のところ、数の問題を今申し上げました。では、数は少なくても質はいいのかという問題です。質の問題も大変問題となっています。去年の最高裁の統計を見ましても、今の成年後見の利用は、実際上は、家族が、当の本人がもう判断能力がなくなってしまった後に財産の管理処分などを目的として利用している、それがほとんど多数を占めます。これは、本来の成年後見制度の趣旨とは違うものであります。
 成年後見制度の趣旨は、あくまでも本人が、まだその残存能力があるうちに、地域できっちり暮らしていくために、しかしながら、判断能力が不十分であるがゆえになかなか暮らしにくい、その判断能力の不十分さを補うような人をつけることによって、自己決定権を尊重していこう、ノーマライゼーションの理念を実現していこう、そういった、ある意味美しい、輝かしい理念のもとにできた制度であります。
 しかるに、今の制度利用は、数が少ない上に、かつ、その内実は、実際上は、家族が遺産分割のために、もう完全に判断能力がなくなって寝たきりの人のかわりに判こを押してもらうために利用している、そういうのが実態であります。それが非常に多い。そういう比率ではだめなのであって、その内実、質を高める努力が必要だと思います。
 そのためにも、最高裁の運用においては、運用面の大幅な改善が必要だと考えます。要するに、運用面の改善については、簡単に言えば、金が高い、手間がかかる、そして時間がかかる、この問題であります。
 費用については、現在、申立人費用となっております。しかしながら、本人のための制度なのに、申立人をする人が原則負担では、申し立てをちゅうちょしてしまいます。ドイツなどの例では、これは本人負担になっています。制度趣旨からすれば本人負担が当然であります。お金も、最高裁は五万以下がふえてきたと言いますが、五万でも高いんです。実際は十万ぐらいかかることがほとんどです。本人のためにと思っても、十万もかかるのではちゅうちょします。
 時間も、三カ月以内がふえたと言いますが、三月もかかったのではぼけが進んでしまいます。一カ月以内にちゃんとやるようにすべきであります。また、手続書類も必要書類が多過ぎます。一般の方が簡易に利用するには、今の制度は実際では使いにくい制度です。
 この点、どのように改められるのかお答えください。
○山崎最高裁判所長官代理者 現行成年後見制度が施行される前の旧制度では、やはり時間や費用の面で当事者に少なくない負担がかかっているという指摘がございました。現行制度はこの点で改善を図ったものでございますが、なお一定の費用、審理期間、手続を要するものであることは委員御指摘のとおりでございます。
 これを少しでも改善すべく、費用のかかる鑑定手続に関し、冊子として「新しい成年後見制度における鑑定書作成の手引」などを刊行し、また現場におきましても、実際に鑑定を行う医師に配付して鑑定書を作成する負担の軽減を図っているほか、本人の状態を詳しく把握している主治医に対して積極的に鑑定を依頼するなどの工夫をしております。
 これらの工夫によりまして、この鑑定というものは人の行為能力の制限につながるものでございまして、医師の確保という問題もあってなかなか困難な問題がございますが、鑑定費用も一定限度低廉化されてきておりますし、当事者の費用負担が軽減して、鑑定期間自身も一定程度短縮され、全体の審理期間も短縮しつつあると思います。このような方向をより一層簡便なものになるように推し進めていきたいと考えているところでございます。
○泉(房)委員 運用面が少しずつ進んでいることは、私も努力は本当に多といたします。
 しかしながら、繰り返し申し上げます。百万を目指すのに四万から少しずつの改善ではとてもとても追いつきません。抜本的な運用改善、このことを強く求めたいと思います。
 次に、監督の問題であります。
 この後見制度が内実を伴うためには、実際の後見業務が本当にこの制度趣旨に見合ったものになる必要があります。しかるに、実際のところ、先ほど申し上げました、家族がお金を目当てといいますか、財産目的でやっていることがかなりあります。
 実際上、解任の例を調べてみますと、最高裁の統計によりましても、後見人が解任されている数についてでありますが、解任事例は、制度発足時の十二年が三十七件、十三年五十一件、十四年八十八件、十五年は昨年末までで百十五件、辞任、これにつきましては、同様に百十七、百六十四、二百四十二、三百六十二とふえていっています。
 ただ、実際上、辞任や解任になるというのは表面化したケースにすぎません。ほとんどの多くは当の本人は判断能力はないわけですから、当の本人が自分の財産を食いつぶされていることに気づくことはほとんどありません。裁判所が気づくというのは本当に表面化したほんの少しです。
 この問題は本当に根深い問題がありまして、問題の所在として私がすごく危惧しますのは、家族というものはほとんどの場合親の財産の相続推定人に当たるということであります。親の財産をそのままにしておけば、子供が三人いれば三等分されて自分のもらい分は減ります。そういったいわば利害関係に立つという潜在的な状況があります。
 そのまま親の財産をキープしておけばもらい分が少ない、であれば少しずつでも、親の面倒を見ているのは私なんだから少しぐらいもらってもいいという非常に規範意識の低い中で少しずつ生活費に流用する、そういった面が事実上あります。こういった面につきまして、裁判所はどのような監督のあり方を御検討されているのかお答えください。
○山崎最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、後見監督というものはなかなか難しいものがございまして、件数自体も、後見人選任事件がふえると同時に、そのまま件数として引き続いていくわけでございます。そして、後見人等が適切な財産管理を行えるかどうかということも大きな問題になっておりますので、その後見監督事務につきましても、いろいろな資料を作成して、その適正化を図るために各庁でいろいろな工夫をしております。
 後見監督事件、まず改善の工夫例を申し上げますと、後見人に選任される者に後見人の職務内容、責任等をきちんと理解してもらうことがまず重要であると考えられますので、後見人向けの手引書などをつくりまして、その職務、収入支出の管理の仕方、被後見人の財産から支出できるもの、裁判所との連携の仕方などを紹介しまして、あわせて、被後見人に損害を及ぼした場合には民事、刑事上の責任が問われることを認識させている庁もございます。
 また、適切かつ公正な後見人を選任すること、これがまず一番重要なことでございますので、後見人候補者から後見人を選任する際に、その候補者を見きわめた上で、選任することが必ずしも相当でない場合には、候補者として挙げられた親族以外の第三者を後見人として選任したり、複数の後見人を選任して事務を分掌させたりするなどの工夫をしておりまして、そのような取り扱いをする事案がふえてきておりますが、これも一つの改善工夫の一環であろう、成果であろうと思います。
 また、この後見監督事務の難しいところは、後見人としての職務、責任の自覚を強く促したり、親族以外の第三者後見人を選任しようとしたりしますと、その候補者である申立人が申し立てを取り下げるというようなこともございます。また、裁判所が厳しく監督しようとしますと、後見人との関係が悪化して資料の提出等が順調にいかないというような難しい問題もございます。
 こういう問題につきましては、各庁での研修の機会等を通じていろいろな取り組み例を紹介しつつ、改善を図っていきたいと考えております。
○泉(房)委員 監督につきましては、裁判所の限界というのは本当に明らかだと思います。もっとシステムの問題、法整備の問題を含めてしていかないと、監督をきつくすれば利用は進まない、利用を進めるために簡単に手続してしまうと不正行為が続出するという非常に難しい関係に立つ。この問題を解決するためにはまた違った発想の転換も必要だと思いますので、引き続きこの問題に取り組んでいきたいと思います。
 そして、このように今質問してまいりましたが、この成年後見制度ですが、管轄といいますか担当が法務省なのか厚生労働省なのか最高裁なのか、今回質問するに当たって問い合わせてもなかなか答えがはっきりと得られません。
 成年後見制度というのは、まさに介護保険と車の両輪としてスタートしました。その後、支援費制度も導入され、ますますその必要性が高まっている。介護保険の見直しの論議も進む中、車の両輪である片方の論議が進むのであれば、もう片方の成年後見制度についての議論も深めていくべきだと私は考えます。
 そしてまた、今司法改革が進められておりまして、その中に、司法ネット構想という構想も進んでおります。その中に、この成年後見制度、これの拡充に向けての取り組みをこの司法ネット構想の中にも取り入れていただきたい。そうすることによって一気にこの利用を促進する。そういったことをぜひとも図っていただきたいと強く思っておりますが、この点、大臣お答えよろしくお願いいたします。
○野沢国務大臣 泉議員におかれましては、成年後見制度の普及並びに適切な運用に邁進することによりましてお年寄りの福祉に大変日ごろから尽力をしておられることに、心から敬意を表するものでございます。
 お尋ねの、司法ネット構想の中にこれを取り込むということにつきまして、この構想の中核となる運営主体の窓口において、主要な業務の一つとして、相談の受け付け、情報提供、関係機関等への振り分けなどを行うこととしております。
 御指摘の成年後見制度についても、運営主体の窓口の相談を受けながら、一般的にあるいは個別的な案件に応じた適切な情報の提供がなされる必要があると考えております。
○泉(房)委員 今の答弁は、極めて大きな答弁だと理解しております。司法ネット構想の中に成年後見制度が位置づけられる答弁だと私は理解いたします。
 しかるに、その内実につきましてこれから議論を進めるに当たりましては、きょう質問をしてまいりましたが、この成年後見制度を本当に必要としている数がどれくらいいるのだろうか、今の実態がどうなんだろうか、そこにどういった問題があり、運用改善、法整備も含めてどういったことが必要かということにつきまして、それぞれ関係各所からきっちりと話を聞いて、その改善点を含める中で、司法ネット構想の中で本当に拡充に向けての取り組みをしていただきたい、そのように切に願う次第です。
 この点につきまして、再度大臣の意気込みの方をお聞かせください。
○野沢国務大臣 御指摘のとおり努力してまいります。
○泉(房)委員 一緒に頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。